マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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晩秋の逢瀬

pixivに投稿してたお話。
雪女には涙がよく似合うと思うのですが、如何でしょうか?







 ん……

 まぶしい


 窓から差し込む日差しで目が覚める。
 数回寝返りをうった後に、布団から立ち上がり着替える。

 ここ最近、朝晩の冷え込みが強くなってきた。
 まだ早いかもしれないが、そろそろ冬に向けた準備を視野に入れても良いかもしれない。

 いつもの服に袖を通し、雨戸を開け放つと、朝独特の空気がサァッと流れ込んでくる。
 日中はまだ暑くなると言うのが信じられないぐらいに冷たい。

「よしっ」

 全ての雨戸を開け終え、日課となっている見回り兼散歩に出かける。
 この時を逃すと基本的に外に出ることが無い。
 だから日課として、出来る限り外に出るようにしている。

 昨日、霊夢と魔理沙達が「宴会だー」と乗り込んできてウチにある食材を全部使い切ってしまった。
 基本的に食べなくても大丈夫とは言え、酒の肴程度には蓄えておきたい。
 それと、よく店に来る彼女たちの為に蓄えておくのも悪く無い。

 我が家の食糧事情を考えつつ、おもむろに店のドアを開け……


 閉めた。


 おかしい。
 僕はまだ夢の中に居るのだろうか?
 思わず頬をつねって夢かどうかを確認してしまう。

 そう、これはきっと見間違いか何かだ。
 あいつがこんな時期に、こんな所に居るはずが無い。

 ヒリヒリと痛む頬を撫でながら、意を決してドアを開ける。
 はたして、そこにはパタパタと手を振っている。『あいつ』が居た。

「……どうしてここに?」
「雨戸を開けているからそろそろ出てくるかと思ってね~」
「いや、そういう意味じゃ無くてだね」

 冬の象徴とも言うべき妖怪、レティ・ホワイトロック。
 彼女がドアの前に居ることもだが、何故この時期に出てくるのかと言うことだ。 

「まだ立冬どころか霜降(そうこう)すら来ていないじゃないか」
「ほら~、最近ちょっと冷え込んで来たじゃない?」
「……それだけかい?」
「えぇ、それだけよ」

 それだけで起きてくるのは如何なものかと思うが。
 だが、のほほんとした表情を見る限りでは、彼女にとってはどうでも良い事なのかもしれない。

「でもねぇ~、まだ少し眠くて……ふぁぁ」
「そうかい、早く寝床に戻って寝ると良い」
「冷たいわ~」
「おや、冬の妖怪でも寒いと感じるものなのかい?」
「えぇ、寒いものは寒いわよ」
「それなら尚更早く寝床に戻ると良い」

 そうすれば、僕は今日一日平穏無事に過ごせるのだから。

「そこは『僕が暖めてあげるよ』とか言う所じゃ無いのかしらぁ?」
「生憎と僕は凍死したく無いんでね、ってこら」
「あらぁ、まだ布団が敷いてあるじゃない」
「勝手に入らないで貰えるかな?まだ営業時間じゃ無いんだ」
「大丈夫、私はお客じゃないから問題無いわねぇ~」
「お客で無いのなら帰ってもらいたい」
「おやすみなさい~」

 あっと言う間に脇を通り抜け、流れるように布団の中へ潜り込んでいく彼女を止める術は無かった。
 普段のおっとりした言動からは想像できない早さだ。

「はぁ……」








「ん~昨日はちょっとやりすぎたかしら?」

 でも、辺り一面が雪で真っ白に染まっているのは気持ちいいわ。
 まぁ空を飛ぶことが出来なかったら移動にとても苦労しているでしょうねぇ。
 ……えっと、だいたいこの辺から降りれば良かったかしら?

「よいしょっと」

 はい、ぴったり香霖堂。
 この窓から店内の様子が一望できるのよね。

 ……店主、椅子に座っているのを確認。
 どうやら読書に没頭しているご様子。

「こういうときは、こっそり入るのが定番よね~」

 ドアに鍵は……掛かってる筈が無いわね。
 気が付かれないようにソーっとソーっと。
 抜き足、差し足、忍び足、っと

 よし、気が付いて無いわね。
 目隠しで「だーれだ」っていうのも良いけど、ここは「わっ!」と驚かせる方が良いかしら?
 うーん……。

 そうだわ、ここは首筋に息を吹きかけましょう。
 ふふっ、なんて言うのかしら?
 びくって反応?
 それとも~声を上げるのかしら?
 どういう反応をするのか楽しみね。

「ふーっ」

 ……あら?無反応?寂しいわね。
 つまんないわ。

「ちょっと~店主さん」

 ――ドサッ

 ちょ、ちょっと、大丈夫?
 もぉ、軽く触れただけなのに、なんで椅子から落ちるのよ。

「店主さんだいじょ……!」


 うそ。
 ねぇ、嘘でしょ!?

 なんで?


 なんで雪原で倒れている人と同じ顔色なの?




「お前がこーりんを○○したからだよ」
「あなたが霖之助さんを○○したのね」

 いつの間にか黒白と紅白の人間が。

「ちがう、私じゃない」
「じゃぁなんで店主が○○だの?」
「凍死ですから一人しか居ませんよね?」

 どこかのメイドと大きな刀を持った剣士が。

「ちが……う」
「ここの店主を○○したのは貴女ね?」
「【古道具『香霖堂』店主が○○される、犯人は雪女か?】見出しはこれで決定ね」

 吸血鬼とブン屋が。

「……っ」
「あら?どこへ行こうとしているのかしら?」

 走り出した私の目の前に大きなスキマが。

「あなたが○○した」
「違う!」
「あなたが○○した」
「やめて!」
「あなたが……」

 むくりと起きあがった霖之助さん。
 やめて、こっちにこないで。
 おねがい、たすけて。

「僕は」

 いやだ、ききたくない

「君に○○されたんだよ」
「いやぁぁぁあ!」






「いやぁぁぁあ!」
「おい、大丈夫か?」

 絶叫するレティの肩を掴んで揺さぶる。
 先ほどから酷くうなされていたので、様子を伺っていたのだ。
 叫び声が出るような夢だ、流石に起こすしかないだろう。

「起きろ、おい」
「……りん…のすけ…さん?」

 どうやら気が付いたみたいだ。
 だが視線がフラフラと彷徨ったままだ。

「本当に大丈夫な……うわっ」

 いきなり飛びついてきた彼女をどうにか受け止める。

「おい、何を……」
「……っく、ひっく」

 「するんだ」と続けようとしたのだが、抱きついたまま泣く彼女を見て言葉を飲み込んだ。
 泣いてしまうぐらい酷い夢だったのだろうか?

「ぐすっ、ひっく」

 なにはともあれ、泣き止むまで動くことは出来ない。
 だから僕が出来るのは、彼女を落ち着かせる事だ。

 ――トン、トン

 ゆっくり、優しく、背中を軽く叩く。
 お袋さんが魔理沙を寝かしつけるときに使っていた手だ。
 幼子を寝かしつけるのと同じ手が有効かどうかは分からないが、何もしないよりは良いだろう、と思う。



「落ち着いたかい?」
「……ええ」

 それは良かった、出来れば早く離れて欲しい。
 先ほどから少し寒いのだ。

「ねぇ、霖之助さん」
「なんだい?」
「やっぱり貴方も凍え死んだりする……かしら?」

 俯いた彼女の顔はどこか不安げで儚く見える。

「冬に外へ長時間出てれば凍死するかもしれないね」
「そう……よね」
「ただ」
「ただ?」

 こちらを見上げた彼女と目があう。

「そんな長時間出るような事は滅多に無いし、仮に出ることがあってもそれなりに着込むさ」
「でも……」
「それには外の世界から流れ着いた便利な懐炉もあるのでね、滅多なことは無いよ」

 店にはストーブ、外出時には懐炉。
 寒さ対策は万全だ。

「そうね……」

 寝ていた時に見ていた夢と関係するのだろうか?

「よっし!」

 掛け声とともに立ち上がるレティ。
 何か思い悩んでいた事が吹っ切れた様に晴れ晴れとした顔だ。
 先程の質問と夢との関連性が気になるが、元の調子に戻ったなら聞く必要も無いだろう。

「そろそろ帰るわ~」
「あぁ、気を付けて」

 彼女が開けたドアから見えた景色は、もう秋が始まりそうな感じであった。

「そうだ」

 ドアの外に出たレティがクルッと振り返る。

「ねぇ、霖之助さん」
「うん?」
「また冬に来ても良いかしら~?」

 特に拒む理由は無いが、彼女にだけはこう答えるべきだろう。



「寒くしないのであれば、ね」
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  1. 2011/05/31(火) 22:50:49|
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