マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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椅子

pixivに投稿してたお話。
自分の主人が、気になるあの人と楽しそうにしている。ましてや一緒の椅子だなんてうらやま……けしからん、という咲夜さんが窓の外に居ると思って頂ければ。






パラ……


 僕はさして興味の無い本のページをめくっていた。


パラ……


「へぇ、この魚は空も飛べるのね」


パラ……


 いつも読んでいるような文章を書き連ねている本では無く、写真集という類の本だ。
 本の題名は『海のいきもの』。


パラ……


「何このタコって魚、気持ち悪いわね」


パラ……


 幼い子に向けた文章ではあるが、外の世界にしか無い『海』という物を知るには良い資料だ。
 だが、もう何度も読んでいるため、内容をほとんどを覚えてしまった。

パラ……


「あら、タコと違ってこのイルカって魚は愛嬌があるじゃない」


パラ……


 そして一つ問題点がある。


パラ……


「ちょっと、まだそのページを読み終わって無いのだけれど」

 僕のページを繰る速度に対して抗議の声を上げたのは、お得意先の一つである紅魔館の当主、レミリア・スカーレット。
 普段なら『何故、君のペースに合わせないといけないのか』
 あるいは『自分でページを繰れば良いじゃないか』など、間違いなくそう言うだろう。
 けれども、今日の僕には視界に映る白い帽子に向かって、心の底から言いたいことが一つある。

「まずは椅子から降りてくれ」

 そう、彼女は僕の膝の間にスッポリと収まり、僕と同じ椅子に座っているのだ

「何故かしら?」

 それはむしろこっちが聞きたい、何故ここに座るのか

「あら、だってこんなに素敵な椅子は他に無いじゃない」
「同じ椅子なら向こう側にもあるだろう」
「でもその椅子は本のページを繰ったり、お茶やお菓子を取ってはくれないでしょう?」

 その通りでしょう?と言った感じの目でこちらを見てくる。
 だから僕は机の上にある煎餅を取り、ボリボリとむさぼり食う事にする。
 口の端からこぼれた欠片が、彼女の帽子や膝の上へと落ちる。

「砕いて食べやすくしてくれるのは有り難いのだけど」

 指先大ぐらいの欠片をつまみ上げ。

「少し小さすぎるのが難点ね」

 そのまま口の中へ放り込む。

 薄味ね、と感想を述べるレミリアに対して、僕はもうあきれる他無かった。
 このまま抗議した所で、退く事は無いだろう。
 動かない物を無理に動かして怪我をしては元も子もない。
 ましてや吸血鬼相手だ、大怪我をすることは間違いない。
 仕方がないので気になっていた事を聞いてみた。

「ところで、どうしてこの本に興味を持ったんだい?」
「この前、月へ行ったときに『海』を見たのよ」

 そういえば以前、彼女の従者がアポロ計画に関する書籍を全部買っていったが。
 それの資料を基に月に行ったというのだろうか。

「でね、その海には何も居なかったんだけど、『外の世界の海には生き物が居る』ってパチェが教えてくれたのよ」
「館にある図書室にある本じゃダメなのかい?」
「あそこにあるのは、文字や挿絵しか無い古くさい本ばかりだもの」

 彼女は古くさいと言うが、あの図書室には貴重な資料が数多く眠っている。
 特に西洋の魔術書や寓話集は幻想郷一だろう。

「それに比べて、こっちには綺麗な絵や鮮やかな写真が多いじゃない」

 トンッと椅子から飛び降り、こちらに振り向く。

「それにこんなに素敵な椅子があるんだもの、こっちの方が断然良いわ」
「高い評価を頂けるのは有り難いが、僕は椅子じゃない」

 抗議しても無駄だとは判っているが、椅子としての評価は避けたい所だ。

「よし決めた」

 僕の抗議は受け入れられるどころか、聞いてすらいない様だ。
 そして何か思いついた表情で、顔をグイッと近づけてくる。

「貴方、咲夜と『つがい』になりなさい」

 ……意味が判らない。
 何故そこで、彼女の従者と夫婦になれと言う発想が出てくるのか。

「どういう意味なのか説明して欲しいのだが」

『理解出来ない事は気にしない』
 これは僕のポリシーだ。
 ここはいつも通り軽く流せば良いものの、あまりの意味不明さに思わず聞き返してしまった。

「人間って年頃になったら『つがい』になるんでしょう?」
「必ずと言うわけでは無いが、概ねその通りだね」
「咲夜も丁度良い頃だと思って、つがいの相手を捜していたのだけど、良い相手が居なくて」

 まさかとは思うが人里で相手を捜して居たのだろうか?
 そんな事をしていると、天狗の格好の餌食になるだろうに。

「ちょっと休憩がてらにこの店に入ったら、咲夜の相手に丁度良い椅子が」

 胸を張ってビシッと僕を指差す。
 もう椅子についてはとやかく言うまい。

「『つがい』を探すのは良いが、相性の善し悪しがあるだろう?」
「あら、そうなの?」
「キミは嫌いな相手を側に置きたいのかい?」
「お断りするわ」

 心底イヤそうな顔で僕の問いに答える。

「当然、彼女にも好き嫌いがあるだろう?」
「あら、でも咲夜は――」
「まぁ、お嬢様、こんな所におられたのですね」

 レミリアは突如現れた彼女の従者……咲夜の手により口を塞がれていた。

「あら、店主さんこんにちは」
「あ、あぁ、こんにちは」
「むぐぐー、むぐぐぐぐー!」

 挨拶を交わした後にやっと、彼女が時を止めて現れたと言うことに思い至った。
 しかし、何故主人であるレミリアの口を塞ぐのだろうか。

「さぁ、お嬢様、お茶の時間になりましたので屋敷へ帰りましょう」
「むぐ?むぐむぐぐー」
「はい、わかりました、善は急げと言うことですね」
「むっぐー!!」

 どう見ても違う気がする。
 それにしても、レミリアの力なら咲夜の拘束を解くのは容易い筈だが。

「流石はパチュリー様の吸血鬼封じ、良く効きますわ」
「むぐー!」

 そんな便利な物があるのか。
 今度、商品として取引出来ないか交渉してみたいものだ。

「むぐぐー、むぐぐぐむぐーむぐ!」
「いいえ、決して外から様子を伺ってなんていませんわ」

 全く気配が無いので気が付かなかったが、何時ぐらいから見ていたのだろうか?

「それでは失礼致します」
「むぐー!むっぐぐぐー」

 レミリアを小脇に抱え、あっという間に店から立ち去る。
 ドアを開けっ放しにしてしまうぐらい急ぐ必要性があったのだろうか?
 とりあえずドアを閉め、店の中を片づける。



 つがい、ね
 ふと咲夜の顔を思い出す。

 そういえば彼女の顔が真っ赤だった気がする。
 ここまで来るのに走って来たのだろうか?
 飛んでくればもっと早く、楽に来ることが出来たのだろうに。

 まったく、変な所が抜けている瀟洒な従者だ。
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  1. 2011/05/31(火) 22:49:40|
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