マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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妖精の恩返し

pixivに投稿してたお話。
大ちゃんの明確な発言は出来るだけ控えるようにするのが大変でした。






「なぁ、香霖」
「なんだい魔理沙」

以前から魔理沙に「机に腰を掛けない様に」と何度も言うのだが一向に止める気配がない。

「香霖堂はいつから店員を雇うようになったんだ?」
「僕は店員を雇った覚えが無いよ」

そう、僕が雇った訳ではない。

「じゃぁ、あの妖精は何なんだ?」

魔理沙が言っているのは、戸棚の埃をはたきで落としている妖精の事だと思う。
頭の横でまとめている髪の毛が、ハタキと同じリズムで揺れている。

「さぁ?何の妖精かは知らないよ」
「妖精の種類じゃなくて、何で居るのかを聞いて居るんだぜ」

下から上に、背が届かない場所はフワッと宙に浮いてハタキをかける。
しかし、上から下へと埃を落とさないと全く意味が無いのだが。

「あぁ、そっちの意味か……怪我をしていたので傷の手当をしただけだよ」

もっとも、本人が楽しそうなので口には出さないでおく。

「妖精に傷の手当ては意味があるのか?」
「痛みが和らぐ、という意味では効果があるんじゃないかな?それと……」
「それと、なんだ?」

次の棚はそう簡単に壊れる物が無いのでそこまで注視する必要は無いだろう。
目線を魔理沙に向けると、彼女と目があった。

「……いや何でもない」

魔理沙の幼い頃に似ていた、というのは言わないでおくことにする。

「ちぇ、なんだよ」

よいしょ、と言いながら机の上から飛び降りる。

「それじゃ、また来るぜ」

偶には見送りをするのも良いだろう、と魔理沙と一緒に外へ出る。

「一緒に貯まったツケを払ってくれるなら大歓迎さ」
「借りてるだけだから払う物なんて無いぜ」

ホウキに跨り、ニヤッとした顔をこちらに向ける。
全く支払う気が無いというのがよく分かった。
まぁ、こちらもそれほど困るわけではないので強要はしないが。

「じゃぁな、香霖」
「気を付けて帰るんだぞ」

両足で軽く地面を蹴り、宙に浮いたかと思うと、あっと言う間に飛び去っていった。
地形に左右されず飛ぶことが出来るというのは、少し羨ましい物がある。

魔理沙の姿が小さくなったのを確認して、木製の小さなドアを開け店の中へ戻る。

さて、あの妖精をどうするべきか。
飽きて勝手に出て行ってくれれば良いのだが、必ず出て行くという保証はない。
しかし特に悪さをするわけでも無し、むしろ色々覚えさせて店番にさせるのも良いかもしれない。

そちらに集中していた為か、店の中の妖精が居ないことに気が付くことが出来なかった。
後ろ手でドアを閉め、とりあえず椅子に座ろうと部屋の真ん中を過ぎた頃に。

「うわっ!」

突如目の前に現れた妖精に驚き、体のバランスを崩してしまう。
とっさに近くにある棚に手を伸ばすが、しっかりと掴むことが出来ず、そのままドスンと尻餅を付いてしまう。

「いててて」

僕を驚かせた当の妖精はニコニコした顔でこちらを見下ろす。
正直、油断していた。
妖精が居るというのに考え事をしながら歩くとは。
見た目は大人しくても流石は妖精、といったところか。

ニコニコ

ここに座り続けても仕方がない。
片手を床に衝き、立ち上がろうと視線を上に向ける。

――ユラッ

棚の上にあった何かが妖精の姿と重なった。

「危ないっ」

「えっ?」という顔でこちらを凝視する妖精を、立ち上がる体勢から手を伸ばし抱き込む。
この体勢だと頭に当たるかもしれない、そう思い覚悟を決める。

――ガスッ!

何かが額に当たった。
強い衝撃ではなかったので、大丈夫だろうと思う。
壁を使い、妖精を抱えていない方の腕で立ち上がった時の勢いを殺す。

「何とかなったか」

何が何とかなったのかはよく分からないが、思わず口にしてしまう。
よくよく考えると再生力の強い妖精を庇う必要は無かったかもしれない。
仮に消滅するようなダメージを受けてもすぐに再生するのだから。

「大丈夫かい?」

腕の中にすっぽり収まっている妖精に問いかける。
彼女は恐る恐る顔を上げ、僕の顔を見た途端に「あっ」と言う顔をする。

何か顔に付いているのだろうか?

ここで僕は額に違和感を覚えた。
一部分だけ異様に暑い、そのせいか汗まで出てきた。
額から鼻筋・口元を通り口の中まで一気に流れて来た。

そこで初めてそれが汗では無く血であることに気が付く。
そして今まで「暑い」という感覚だったのが「痛い」という感覚に変わってくる。

とりあえず、傷口を押さえないと。
出血しているのだが、思いの外冷静に考えることが出来る。

「ちょっと退けてくれるかい?」

僕は片手で額を押さえ、ポンッと軽く妖精の肩を叩いた。
だが、彼女はビクッと反応するだけで動いてくれる気配がない。
仕方がないので僕が一旦横に避けてから立ち上がる。
すぐ側にあった手拭いで手や顔に付いた血を軽くふき取り、傷口を押さえる。

机のすぐ側にある薬箱を開ける。
永遠亭の薬箱だが包帯も一緒に入れたおいたのだ。
風邪や怪我とはあまり縁の無い身体だが、魔理沙や霊夢の怪我の手当。
また偶に薬を求めにやって来る客が居るのでよくお世話になる。

包帯とあて布を取り出し、手早く傷口の手当をする。
額の傷は派手に出血するが、傷口は浅いと聞いているのでこの程度の処置でいいだろう。
最後に傷口を押さえていた手拭いを軽く洗い、顔に付いた血をふき取る。


一段落ついた所で、僕の額に当たった物を探す。

これか……

床に転がっていた仏像を手に取る。
確かこれは外の世界の物で木や石、青銅とは違うとても軽い材料で作られている様だが良く分からない。
一応「仏像」という名前なのだが作られた目的は「土産用」
供養の為に作るのならば理解できるが……外の世界はよく分からない。

この仏像の光背――後光を表現した物――で額を切ったようだ。
普通ならもっと酷い事になるのだが、この仏像だからこの程度で済んだのかもしれない。


とりあえず額を切った物が何であるかが判りスッキリしたので、先ほど庇った妖精の様子を伺う。

先ほどの位置から全く動かず呆然とした顔でこちらの様子を見ていた。
そして、僕と目が合うとビクッとした様子で何かに驚き、突然泣き出してしまった。


……僕は彼女に何かしたのだろうか。
むしろ驚かされたのは僕の方だし、怪我をしたのも僕だ。

...メ...サイ

何か言っている様だが声が小さく良く聞き取れない。
彼女を驚かせないように足音を忍ばせそっと近づく。

...ンナ、サイ...ヒック...ゴメンナサイ

「ごめんなさい」と言っているのは判ったのだが、誰に何故謝っているのかが判らない。
そういえば魔理沙がまだ幼い頃もこんな感じで泣いていたな、と思い出す。
確かそのときはこうして……

――スッ

彼女の前でゆっくりしゃがみ込み、僕が目線の高さを合わせる。

――ナデナデ

そして優しく頭を撫でる。
こうしていると魔理沙はすぐに泣き止んでくれた。

程なく彼女はの涙は止まったが、まだ俯いたまま顔を上げる様子がない。
……少し気まずい。

魔理沙なら泣き止んだ後、新しい物を見つけそっちの方へ元気よく、良い笑顔で走っていってくれたのだが。
彼女はそうもいかなかった様だ。

「どうして泣いているんだい?」

気にしなければ良いのだが、やはり空気が重いと言うのはあまり心地が良くない。
それに、なぜだかよく分からないが僕が悪いような気もしてきたからだ。


彼女が答えてくれるのを根気よく待ち、ポツポツと話してくれる内容を纏めると。
「怪我の手当の恩返しをするつもりが、私のせいで怪我させてしまいゴメンナサイ」
と言うことだった。

そもそも、人(もっとも僕は半妖なのだが)を驚かせるのが妖精であり、注意散漫であった僕の方が悪いと言える。
また怪我をした事についても、運が悪かった、としか言いようがない。
そして僕は半妖なので怪我の治りも早い。
と言うことを彼女に説明した。

なお、酷い怪我だと間違いなくその場で叩き出した、と言うのは胸の中に仕舞っておく。

彼女はまだ納得のいかない顔をしていたので、わざと強めに頭を撫でる。

「恩返しをしてくれると言うのなら、僕は最後まで使うよ?」

そして先ほどまで持っていたハタキを拾い、彼女に手渡す。

「まだ反対側が埃まみれの様だし、全部落としてきて貰えるかな?」

先ほどとはまた別の驚いた顔をしていたが、ハタキを受け取るとしっかりと握り、ニッコリと微笑んだ。
そしてそのままの表情で、またハタキをパタパタとかけてくれる。

その様子を見て僕は、このまま店番として仕込むのもアリかな、と頭の中で算段を始めるのだった。
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  1. 2011/05/31(火) 22:46:04|
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