マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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想いを紡ぐ糸繰人形

少女が霖之助と一緒に外の世界に行くとしたら、どんな生活になるだろう。

紫が原因で起こしてしまった異変を、ひょんなことから解決してしまった霖之助。
彼女から報酬にと、霖之助が望んでいた外の世界へ行く権利を与えられる。

ただし、1年間という期限付き。
旅をするのもよし、一つ所に留まるもよし。
支度金と場所は紫が用意してくれるらしい。
必要なら仕事も紹介してくれる、と紫は言った。

それから1ヶ月間、霖之助は外の世界について勉強する。
そして……。

~ここまでテンプレ~


でも、今回は行くことに怖じ気づいた少女のお話。

○霖の御大である道草さんからテンプレをお借りしました。

快く許可して下さった道草さんと、タイトルネタを提供して頂いた銀河さんに感謝の気持ちを込めて。

(霖之助 アリス)




「アリス、店の事をよろしく頼むよ」
「ええ、任せておいて」

 霖之助が外の世界へ旅立つ。

 どういう経緯でそんな事になったのか、アリスに知る由もなかった
 けれど、ずっと前から外の世界へ興味を示す霖之助の背中を見て、いつか本当に此処を出ていくんじゃないか。
 そんな事を心の中で薄々は思っていたのだが。

「それと、何度も言うようで申し訳ないが……」
「はいはい、あの奥の部屋だけは絶対に死守ね、特に魔理沙」

 幾度と無く繰り返したやりとりに、ため息を一つ。
 そんなに大事な物なら一緒に持っていけばいいのに、とは思うのだが、口には出さない。
 それよりも、先程から気になっている事が一つ。

「ところで、その魔理沙の姿が見あたらないんだけど」
「ん、ああ……」

 おかしい。と直感的に悟る。
 隙あらば蘊蓄を語り始める霖之助さんが、こうも言い淀む筈が無いのに。

「それが……魔理沙には外に行くのを伝えて無いんだ」
「ふぅん、そっか……はぁ!?」

 予想外の回答に思わず素っ頓狂な声をあげる。

「どうして、そんな……」
「いや、その話を切り出そうとしたんだが、どうにも間が悪くてね」
「それで、今日まで言わず仕舞いなの?」

 気まずそうに首を縦に振るが、あまりの理由に言葉が出ない。

「それで、もし出来ればなんだが……」
「まさか私からこの事を伝えさせるつもりなのかしら?」

 頬に手を当ててにっこりと笑みを浮かべるアリス。
 その有無を言わせぬ雰囲気に、霖之助は完全に飲み込まれてしまった。

「……すまない」
「はぁ、わかったわ」

 くしゃりと前髪を掻き揚げため息つく。
 仕方がないという風に装うが、内心ではこうして霖之助に頼られることがとても嬉しかった。
 もっとも、この後の事を考えると諸手を挙げて喜べないのだが、今、この瞬間だけは忘れていたい。

「ふふっ、名残惜しいのはわかりますが、そろそろ宜しいでしょうか?」

 どこからともなく聞こえる声に辺りを一巡する。
 正体が分かっていてもついつい、首が動いてしまう。

「ああ、待たせてしまってすまない」
「お気になさらず、ですわ」

 スウッと開いたスキマから今回の主犯が降り立つ。

「最終打ち合わせからの変更点はございません」

 手にした扇子を優雅に一振り。
 それに合わせて、先程とはまた別のスキマがぽっかりと口を開ける。

「あとはこのスキマを潜り抜ければ、無事に外の世界へと旅立てますわ」

 どれどれ、と。
 外の世界へ繋がっているらしいスキマを、そっとのぞき込む。

「うわっ……」

 そこにあるのは、口で形容しがたい程の禍々しい空間。
 本当にこれで外の世界へ行けるのかと疑いたくなる。

「霖之助さん、覚悟は宜しくて?」
「ああ」

 なにも知らなければ、これが真っ当な出口に繋がっているとは到底思えない。
 紫事だから間違い無いとは分かっていても、だ。
 いや、むしろ紫だからこそなのかもしれないが。

「霖之助さん」

 それでも躊躇うこと無くスキマに入ろうとする霖之助を呼び止める。
 水を差すようで悪いとは思いつつ、これだけは言っておきたい。

「いってらっしゃい。お土産よろしくね」
「善処しよう」

 苦笑いの表情を浮かべたまま、霖之助が幻想郷から姿を消す。
 それとほぼ同時に、彼を飲み込んだスキマがスッと閉じてしまった。


「本当に良かったのかしら?」
「何が?」

 霖之助を見送った余韻に浸る間もなく、紫がアリスの傍に寄ってくる。

「もう一人ぐらい送れる余裕はありましてよ」
「しつこいわね、行かないって言ってるでしょう?」
「あら、ごめんなさい」

 一体、これで何度目なのだろう。
 幾度と無く聞いた白々しい謝罪の言葉と共にサッと離れる。

「それじゃ、後はよろしくね」
「はいはい」

 再びあの禍々しいスキマ開いてそこへ飛び込む紫。
 その姿が消えた跡をジッと見つめ、そして、自宅への道のりを歩み始めた。




「はぁ……」

 ドサッとベッドへ倒れ込むアリス。
 薄く乗せていた化粧を、先に落とさなければならないというのは理解している。

 けれども、全身を包んでくれる布団の感触に少しぐらい良いか、と、ついつい甘えてしまう。
 その代わりに、枕に顔を埋めたまま、今日と明日の事について思考を巡らせる。

 今日は早めに寝て、明日は香霖堂へ足を運んでおこう。
 よく見慣れたお店だけれど、もう一度おさらいしておいた方が良いかもしれない。

 ごろんと寝返りをうって、天井に向かって手を伸ばし、手を開いたり握ったりを繰り返す。

「一年かぁ……」

 思わず口に出てしまう。
 研究をしていれば、あっと言う間に過ぎ去るはずなのに、なんだかとても長い様な気がする。

(外の世界、ねぇ)

 腕から力を抜き、そのまま視界の端に映る前髪を指先でいじる。

(向こうの人達も里の人達とそう変わりないから目立つかな?
 それに、私のこの髪もそうだけど、霖之助さんと並んだら尚更よね。)

「……何を考えてんだか」

 要らぬ心配に独り言ちて、思わず苦笑いしてしまう。

 枕に顔を埋めても緩んだ頬が締まらない。
 質の悪い妄想だというのも分かってる。

 それでも。
 霖之助さんに見せてもらった外の世界の写真に、二人の姿を重ねる。

 道を埋め尽くすくらい大勢の人が歩いてる写真。
 こんなに人が居ると、迷子になったりしないかしら?
 ちょっと自信がないから霖之助さんの手を掴んじゃったり、とか。
 できれば、霖之助さんから手を繋いでくれると嬉しいんだけど……期待出来ないわね。


 あの高い建物の上から観た街はどんな風に見えるのかしら?
 私は慣れてるから平気だけど、霖之助さん高い所は苦手だったりして。
 でも、仮に苦手だったとしても、顔色一つ変えないわね、きっと。


 お店で雑貨品や服を二人で選んでみるのも良いかな。
 「どっちが良いかな?」なんて聞いても適当に答えるに違いないわね。
 それよりも霖之助さんに合う服を探すのも楽しそう。
 あ、もちろん霖之助さんが荷物持ちよね。
 ふふっちょっとやってみたい気がするわ。

 
 露天のアクセサリーをねだってみるのも良いかもしれないわね。
 でも、こういうのは買ってくれそうには無いのよね。
 出来と値段が釣り合ってないとか、そんな事を言い出しそうだし。
 物が欲しいんじゃなくて、買ってくれる事が嬉しいんだけどなぁ。
 でも、どっちかというと霖之助さんは自分で作っちゃいそうね。
 それなら、彼の手作りの方が欲しい。かな。


 夕日で茜色に染まる土手沿いを二人並んで歩く。
 ちょっと立ち止まって、そこから見える景色を眺めてみるのも良いわね。
 目に映る景色は全く別物だけど、きっと、夕日の色はどこも変わらないんじゃないかしら。


――あれ?霖之助さん?

 辺りを見回すと小さくなった霖之助さんの後ろ姿が見える。
 いつのまにあんな遠くへ行っちゃったんだろう?

――ああ、もう、待ってよ。

 遠くに見える背中を追いかける。

 けれども、どれだけ追いかけてもその差を縮める事が出来ない。

――待って、霖之助さん。

 追いつけないのならばと、必死に霖之助さんに呼びかける。

 それでも、どれだけ声を出しても彼を留めさせる事が出来ない。

――なんで?どうして?

 追いつけない事が悔しくて。
 独り残されるのが寂しくて。

――霖之助さん。

 ただ、呆然と見つめる事しか。

――待って。



「……」

 ハッと、目を開けて我に返る。
 いつの間にか日が沈んでいて、辺りは暗くなっていた。

 おもむろに起き上がって、頬を伝う涙を拭う。
 何度も頬を拭っても次から次へと流れて止まらない。

「……っ」

 声にならない呻き声と共に、只々溢れる涙。

 本当は霖之助の傍に居たかった。離れ離れになりたくなんて無かった。

 だから、霖之助を引き留めるために、子供のようにだだをこねて泣いてみようかと思ったことさえあった。
 けれど、そんな醜態を晒しても彼が思い留まってくれなかったらどうすればいいのか。

「――ん」

 ならば霖之助と一緒に外の世界へ行くという選択。
 幸いにも、紫が霖之助のサポート役として外の世界へ行く相手を探していた。
 だから、後はそれに乗ればいいだけの事。

 でも。
 もし、彼に一緒に行くことを拒絶されたらしまったらどうすればいいのか。
 それがとても恐ろしくて、素直に行きたいだなんて言えなかった。

「――さん」

 折角のチャンスだというのに、怖じ気付いてしまった。
 だから、せめて、彼が気兼ね無く旅立てる様に。
 だから、それを、自分への言い訳の道具として。

「――け、さん」

 幻想郷に残って、彼の留守を預かることを決心したというのに。
 寂しさと未練がましさと自分自身の情けなさで涙が止まらない。

「りん、のすけ、さぁん……」
『アリス?』





 しんぞうが とまるかと おもった。






――「幻想郷との連絡手段、ですか?」
――「勿論、それは別途用意していますとも」
――「少し偽装しておりますので、見つけにくいかもしれません。ですが、霖之助さんならきっと大丈夫ですわ」


 「道具の名前と用途が分かる能力」
 裏を返せば、道具の名前か用途が判明していれば、見た目が分からなくても探し出すのは容易いだろう。
 しかし、だ。

「まさか人形だとはね」

 確かに、これならば誤って誰かに使われることも無いだろう。
 霖之助ですらそう思ったのだから、こちらの住人が人形で向こうと連絡がとれるとは夢にも思うまい。

「よっこらしょ、と」

 全てを片付け、落ち着いた所でその人形をもう一度眺める。

 青いワンピースに白いケープ。
 それに、金色の髪をしたトリコロールの人形。
 通話用であるにも関わらず、細部まで綺麗に仕上がっており、調度品として大変申し分のない出来だ。
 だが、女性ならいざ知らず、独り身の男性が飾っておくのには、少し躊躇われる。

 見た目はさておき、問題はこれがどこに繋がって、どう使えば良いのかと言うことだ。
 順当に考えれば、紫である可能性が高い。
 だが、この人形を霖之助はつい最近に見た覚えがある。


 そう確か、魔理沙が地底に行った時の話を聞かせてくれた時だ。
 遠距離でも会話が出来るという人形を、自慢げに見せびらかしてきた。

 もう一度、入念に人形を調べる。
 所々に見える、腕や脚についた細やかな傷と衣服の焦げ跡。
 魔理沙が持ち歩いていた時についた傷か、はたまた弾幕ごっこの激しさを物語るものなのか。
 何れにせよ、この人形は魔理沙が持っていた物で間違い無い。

 となれば、これを通して繋がっている相手が必然的に誰であるかを推測するのは容易い。
 ほぼ間違い無いであろうという自信はある。

 残った問題は使い方だ。
 もう一度、魔理沙が話をしてくれた時の事の記憶を掘り起こす。

 人形に話しかける魔理沙。それに答える人形。
 特に何かをした風でも無く、ただ話しかけただけだった筈だ。
 つまり、これは話しかけるだけで良いのだろうか?

 ならば、と。
 いつも通りの口調で、この先に居るであろう人物に呼びかけよう。
 もしかしたら違うかもしれない、その時はその時だ。


「アリス?」
『ひぁ!?』
「うわっ!?」

 予想外の反応に、人形を取り落としそうになる。
 まさか一回で正解にたどり着けるとは、思いにも寄らなかった。

『霖之助さん!?』

 背後で何かが落ちたか崩れたか、はたまた壊れたような激しい音が聞こえる。
 なるほど、感度はなかなかの用だ。
 こちらも時と場合によっては、背後の音に配慮しなければならないかもしれない。

「大丈夫かい?」
『う、うん。ちょっとね』

 ふと霖之助の脳裏に疑問が沸いてくる。
 普段とは違う上擦ったアリスの声といい、先ほどの音といい。
 一体、彼女は何をそんなに慌てて居るのだろうか。

『で、でもどうして霖之助さんがその人形を?』
「紫から何も聞いていないのかい?」
『え……あ、ご、ごめんなさい』

 なるほど、と一人で納得する。
 どうやらアリスは自分が連絡役である事を知らなかったらしい。

「ああ、すまない。君を責めている訳じゃ無いんだ」
『うん……』

 弱々しい返事に、少し罪悪感が沸いてくる。
 だいたい、悪いのはこの事を隠していた紫だというのに、これではまるで僕が悪いみたいじゃないか。
 思わず悪態を付きたくなるが、それをアリスに向けるわけにもいかないのでグッと我慢し、話題を変える。

「何れにせよ、僕個人としては連絡役が君でよかったと思うよ」
『え、えっと……それはどう……いう?』
「勿論お世辞じゃなくて、文字通りの意味だよ」

 ちなみに、霖之助は本当に文字通りの意味で言っている。
 だが、その言葉の取りようによっては重大な意味を持つ場合もある。
 特にその相手が想い悩んでいるなら尚更だ。

 もっとも、その言葉で誤解を招くこと多々あるのだが。

「何せ、こちらで体験した事を幻想郷に帰るまで、誰にも話せないと思っていたからね」
『……はぁ?』

 こんな貴重な体験を一年間誰にも言わずに黙っておける筈がない。
 無論、紫に話したところで、釈迦に説法、孔子に論語、河童に機械。
 だからかといって、魔理沙や霊夢に話したとしても、軽く聞き流されて終わりだろう。
 それなりに親しい間柄で、こちらの話に興味を持ってくれそうな相手というのは本当に数える程しか居ない。

 そういう意味でアリスが連絡役で良かったと言ったのだが。

『ぷっ……っく、あははは』

 一体どう受け取ったというのだろうか。
 いきなり笑い始めるアリスに、流石の霖之助も面食らってしまう。

「そんなに可笑しいことを言ったつもりは無いんだが」
『ご、ごめんなさい。霖之助さんが悪いんじゃなくて、ふふっ……』

 どうにも笑いを堪えきれない、といった様子のアリス。
 本当に何が彼女をここまで駆り立てたのか、見当も付かない霖之助は首を傾げる他無い。

『うん、そうね』

 落ち着いたのか、はたまた笑うことに気が済んだのか。
 だが、彼女の答えは霖之助をさらに惑わせるばかりであった。

『霖之助さんは霖之助さんなんだな、って』
「……それはどういう意味だい?」
『ふふ、それは内緒。それで?そっちの様子はどうなのかしら?』

 その言葉の意味を問いただしたいのだが、どうやら話の主導権がアリスに流れつつあるのを感じ取る。
 ならば、とその流れを阻止する為にも、今度はこちらの気が済むまで話続けさせて貰おう。

「そうだね、まず第一印象だけど……」

 何れにせよ、この一年間は楽しく無事に過ごせそうだ。
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  1. 2011/09/07(水) 21:10:42|
  2. SS
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  4. | コメント:1
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コメント

 作品、読ませていただきました。俺が考えたタイトルが閃きの助けになったのならば、それ以上の幸いは無いですw
 アリスの葛藤に、読んでいて胸をしめつけられる思いでしたが、最後にアリスが救われて、なんだかとても幸せな気分に浸ることができました。素晴らしい作品だと思います。
 拒絶されるのは誰だって怖いですよね。ましてや、その相手が、自分が思い焦がれている人物であるならば尚更。だからこそ、読んでいてこんなにも引き込まれたんだと思います。

 ・・・感想書くの、下手糞だなあ俺(ボソッ

 とにかく、「素晴らしい作品をありがとう」と言いたいのです。眼福でした~
  1. 2011/09/07(水) 21:26:15 |
  2. URL |
  3. 銀河 #flDQlAcg
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