マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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あめのねこ ~とらまる しょう の ばあい~

pixivに投稿してたお話。
とあるアンケートより。






「ああ、残念。
 ここにならあると思っていたんだけど……」
「力になれなくてすまないね、ナズーリン」
「いや、店主殿が悪いわけじゃ無いさ」

 一見すると言うほど残念そうには見えない。
 けれども、彼女の尻尾がしおれた蔓のように垂れ下がっている。

「もし見つけたらお寺へ届ければ良いかな?」
「おや、今日は羽振りが良いね、店主殿」
「大事なお客様の要望に応えられなかったのだから、それぐらいしても罰は当たらないだろう?」

 ナズーリン……と言うよりは命連寺の為と言うべきか。
 売るほどの恩では無いが心証は良くなるだろう。

「ははっ、なるほどね。
 それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ」

 もっとも、口角を上げてニヤッと笑う彼女には全てお見通しの様だが。

「それにしてもまったく、これだけ降られると空も飛べないじゃないか」

 ナズーリンと共に暗くなり始めた灰色の空を見上げる。
 この時期にしては珍しく少し暖かな所為だろうか?
 朝方から水を含んだ綿埃の様なみぞれが降り続いている。

「そうだ店主殿」
「なんだい?」

 黒い三つの円の組み合わせがちりばめられた傘を開く。
「良いデザインだろう?」と笑う彼女とはセンスが合わない様だ。

「この辺りで私のご主人を見かけなかったかい?」
「いや、見て無いな」
「そうか……ああ、いや、何でもない。
 それじゃ失礼するよ。」

 事情を聞こうと口を開いたが、時既に遅く。
 あっという間に小さくなる背中を目で追いかけるしか出来なかった。
 一体何をそんなに急いでいるのだろうか?

「……おや?」

 壁に立て掛けられている細長い棒を手に取る。
 全長の2/3ぐらいでL字形に折れ曲がったそれは、ナズーリンが常に大事そうに持っていた筈だ。
 抜け目のない彼女にしては珍しい。

「ふぅ」

 取り置き用の棚へロッドを立て掛けてから椅子に座って一息つく。
 外気に触れていたのは僅かだというのに、水を掛けられたかの様に身体が冷えてしまった。
 この気温だと恐らく夜更け過ぎには雪へと変わるだろう。
 早めに風呂を沸かすようにして正解だったかもしれない。

「ん?」

 ふと窓の外に目を遣ると、木陰に一つの人影が。
 この天気だというのに、どうも傘は差していない様だ。

「はぁ……」

 こういった連中とはあまり関わり合いになりたくは無い。
 関わりたくないのだが、店の周りに居られると正直、商売の迷惑だ。

 傘を掴み、意を決して冷え切った世界へと飛び出していく。
 刹那、身体の表面を覆っていた熱気が一瞬にして奪われる。

 その温度差に思わず身震いをしてしまう。
 まるで身に纏っていた上着を剥ぎ取られたかの様だ。
 
「やれやれ」

 さっさと追い払ってストーブに当たりたいものだ。

「おや?」

 遠目に見えるのはヒラヒラと揺れる羽衣。

「ふむ」

 そして、虎を思い起こさせるあの警戒色は。

「これはこれは、毘沙門天様」
「え?」

 正確には命蓮寺の本尊である毘沙門天の代理。
 そして彼女を探していたナズーリンの主人でもある

「り……」
「こんな所で何をされて……
「霖之助さぁぁぁぁん」
「うわっ!」

 事情を聞こうと近寄る僕は、覆い被さってくる彼女に為す術もなく。

――バシャッ

 あわよくば財宝神である毘沙門天の御加護を……
 そんな下心を持って近づいたのを見透かされたのかと身構える。

「一体何を……」
「うえぇぇぇん」

 内心の動揺を悟られないようにしつつ、この場をどう切り抜けようか頭を巡らせる。
 だが、どうも様子がおかしい。

「毘沙門て……星、どうしたんだい?」

 僕の問いかけに応える様子も無く。
 ただ泣きじゃくるばかりで、どうにもままならない。

 家を聞いても分からない。名前を聞いても分からない。
 幸いにも、そんな童謡の様な事態にはならなくて済みそうだが。

「ぐすっ……」

 地面に吸われず、行き場を見失った水がじんわりと染み込んでくる。
 ボンヤリと見上げた灰色の空から絶えることなく降り注ぐ。

「はぁ……」

 やっぱり。

 こういった連中とはあまり関わり合いにならない方が良いのかもしれない。





「熱いので気を付けてくれ」
「あ、ありがとうございます」

 白いカップに湛えられたこげ茶色の液体から、ふわっと甘い香りが立ち上る。
 外の世界の飲み物の一種で”ココア”というらしい。
 一番最初は魔理沙にでも、と思っていたのだが致し方あるまい。

「熱っ……」
「気を付けてくれ言った筈なんだが?」

 紅い舌をチョロッと出すその姿に、もはや本尊としての威厳は全く見られない。

「すみません……」

 これで冷え切った身体を暖めるには、少々力不足かもしれない。
 ともあれ、もうそろそろ湯が沸くだろうから、それまでの繋ぎには丁度良いだろう。

 二人でストーブの前に座り黙々とカップを傾ける。
 ふと彼女の表情を窺うとコチラをジッと見つめているではないか。
 何か珍しい物でもあったのだろうか?

「ああ……」

 彼女が何を見ているかに思い至り、開けっ放しにしていた戸を閉めに行く。

「見苦しいものを見せて申し訳ない」
「いえいえ!こちらこそ申し訳ありません」

 珍しく今朝から忙しかったので、布団を上げるのを忘れていたのだ。

「それで、傘も差さずにあんな所で何を?」

 僕の問いかけでカップを傾ける手が止まる。
 言えないのか、それとも言いたくないのか。

「ぅ……」

 先程のナズーリンの様子から察するに、大方彼女とでも喧嘩したのだろう。

「その、実は……」

 逡巡した様子を見せていたが、ぽつぽつと理由を説明し始めてくれた。






「―も――でしょう?」
「――ら聖――じゃ―」

 おや。
 この声は聖とナズーリンでしょうか?
 一体、何の話でしょう?

「――に宝塔を無くし――問題も―」

 ううっ、ごめんなさい。
 また無くしてしまいました。

「だから聖、私が……」
「ナズーリン、貴女の気持ちはよく判ります、ですが」

 何か大事なお話でしょうか?
 それなら、また後で出直してナズーリンに……

「し――は必要ありません」

 ……え?

「聖、そんなことは無い筈だろう?」

 いま、ひじりは、なんて。

「いいえ、毘沙門天の代理である星が、その様な有様では他の者に示しが付きません」





「それで、思わず飛び出して来た。と」
「はい……」

 なるほど。
 それで傘も持たずにあんな所に居たのか。

「それで、これからどう……」
「お願いします!宝塔を見つけるまでの間だけでも!私をこの店に置いて頂けませんか!?」
「あ、あぁ……それは構わないが」
「ありがとうございます」

 あまりの勢いに負けて思わず了承してしまった。
 だが、押されっぱなしというのも面白く無い。

「しかし、タダでと言うわけにはいかないね」
「わ、私は『財宝を集める程度の力』を持っています!ですから」

 なるほど。
 確かに魅力的な能力ではある、が。

「それはすぐに集まるものなのかい?」
「う……」

 やはりと言うべきか。
 財宝が宙から沸いてくる訳でも無いのだから仕方があるまい。

「ふむ」

 もっとも、星をこうして保護しておけば命蓮寺に一つ貸しが出来るだろう。
 仮に見放されたのだとしても、彼女を側に置いておけば多種多様な財宝が集まるかもしれない。

「まぁ、お風呂も沸く頃だろ。、先に君が入ると良い」
「……はい」

 ……少し強く言いすぎただろうか?





「星?」

 いつもより少し早めの風呂から上がると、彼女の姿がどこにも見あたらない。
 ふと辺りを見回すと、閉めたはずの戸が少し開いているではないか。
 真面目そうだったので気を抜いていたが、例に漏れず彼女もここに良く来る少女達と同類の様だ。

「まったく、一体何をし――」

 よもや、自分の膝元で襲撃を受けるなど誰が予想できようか。

「ご、ごめんなさい。
 その、こっこういう事はあまり慣れてませんのでっ!」

 気が付けば再び組み伏せられ、僕の服を着ている星が馬乗りになっていた。
 飛び出して来た彼女が替えを持っている筈が無いので僕のを貸したのだ。

「それで?一体、何のつもりだい?」
「り、霖之助さんも男の人ですからね」
「生憎と生まれてこの方、性別が代わった記憶がないね」
「で、ですから霖之助さんに、ご満足頂けるかどうかは自信がありませんが、
 財宝が集まるまでの間は、わ、わた、私が」

 薄暗くともハッキリと分かる程に頬を染めている。
 どうやら先程の話を真に受けて、彼女なりに考えた事なのだろう。

「はぁ……」
「えっと、霖之助さひゃぁぁ!」

 腕を掴み、一気に体を起こして体勢を入れ替える。
 思っていた程の抵抗は無く、今度はあっさりと僕が馬乗りになる。

「ああああ、あのその、や、やっぱり」

 勢いが良すぎた所為か、鼻先が触れ合うほどに顔が近づいてしまう。
 朱に染まった体からほんのり香るのは、僕も愛用している石鹸のものだろうか?

「んっ」

 もっとも、同じ風呂に入ったのだから、同じ物を使うのは当然だろう。
 それにしても、何故彼女は目を瞑っているのだろうか?

「…………ん?」

 ともあれ、このままでは埒があかないので一旦星から離れて乱れた服を整える。

「あのー霖之助さん?」
「星」
「ひゃい!」

 バッと体を起こし一瞬にして姿勢を正す。
 しかし、そこまで過剰に反応するような事でも無いだろう。

「どうしてこんな事を?」
「だ、だって」

 辿々しく口を開くその様は、まるで叱られた子供のようだ。
 本当に毘沙門天の弟子なのかを疑いたくなる。

「財宝はすぐに集まらないし、手持ちも全く無いんです。
 働くのもすぐに成果が出る訳じゃありません……
 ですからこうする他に無いじゃ無いですか」
「だからといって――」

 もう少し別な方法があるだろうに。

「店主、居るかい?」

 軽率な行動を諫めようと口を開いた所で、ドアベルが来客を知らせてくれる。

「はは、傘をロッドと勘違いしてしまうとは。
 いやはや、私としたことが情けな――」

 やれやれ。
 どうやら星のお迎えが来た様だ。

「まったくだよ、君にしては珍しいじゃないか」

 いつもの様に軽口を叩きながら店側に出て、保管しておいたロッドを手に取る。

「あ……あ……」

 しかしどうも様子がおかしい。
 一体彼女は硬直したまま何を見て――

「ナズーリン……」

 乱れた布団。
 着崩した衣装。
 半泣きの星。

「……ああ」
「り、霖之助クン」

 決めた。

「一体ナニをしていたんだい!?」

 次からは誰が居ても関わらないようにしよう。

[newpage]
「確かに紐で括れば宝塔を無くしてしまう問題も解決するかもしれません」
「だから聖、私が言った通り――」
「ナズーリン、貴女の気持ちはよく判ります。
 ですが星には必要ありません」
「聖、そんなことは無い筈だろう?」
「いいえ、毘沙門天の代理である星が、その様な有様では他の者に示しが付きません」
「しかし……いや分かったよ
 確かに宝塔を紐で結びつけるというのも情けない話だからね」
「ごめんなさい、ナズーリン」
「いや、聖が謝ることは無いさ
 強いて言えばしょっちゅう物を無くすご主人が悪いのさ」
「まったく星も困ったものですね」
「まぁ、ご主人らしいといえばご主人らしいさ……
 さてちょっと探し物に出掛けてくるよ」
「まさか、またですか?」
「さぁてね?それはご主人との約束で聖にも秘密だよ」
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  1. 2011/05/31(火) 23:00:44|
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