マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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▲8十歩

pixivに投稿してたお話。
椛「ねぇにとり、この服、変じゃ無いかな?」
に「別に変じゃないよ」
椛「本当に?」
に「買い物に行くだけだっていうのに、大げさだなぁ」
椛「だって……」








「やっほー霖之助ー!」
「おや、いらっしゃい」

 おや?
 珍しい客だ。

「久しぶりだね、にとり……と、椛も」
「お久しぶりです、森近さん」

 比較的人里に近いこの場所で妖怪、ましてや河童と白狼天狗が来る事は滅多にない。

「もぅ、椛ぃその呼び方は禁止だって言ってるでしょう?」
「な、何の事?」
「霖之助からも何か言ってやってよ」

 にとり曰く「他人行儀すぎるからイヤ」らしい。
 もっとも、彼女も最初から僕の事を呼び捨てにしていたわけではない。
 言葉遣いも丁寧だったし、大人しそうな性格だった。
 けれども、何度も顔を会わせる内に段々と地が出てきたようだ。

「本人が言いやすい呼び方であれば良いんじゃないのかい?」
「霖之助の裏切りものー」
「君と同盟を組んだ覚えは無いよ」
「良いじゃん、そんな細かいことは。そんなこと言ってるとハゲるよ?」

 私はハゲてても気にしないからね、とけらけら笑う。
 自分の事では無いから言いたい放題だ。

「はい、じゃぁ椛」
「え?」
「え?じゃ、無い!はい、もう一度やりなおし!」
「い、いや、私は」
「ほらほら」

 一通り笑い終えたにとりが、戸惑う椛をやんややんやと囃し立てる。
 彼女もにとりの言う事を軽く流せば良いのだろうが、根が真面目な所為かそれが出来ないらしい。

「り……」
「り?」
「霖之助……さん」
「むぅ」

 それにしても一体、何が彼女をそこまで駆り立てるのだろうか?

「まぁ、今回は仕方ない。次は呼び捨てに挑戦だよ」
「いや、にとり……」

 ビシッと指差す姿はなかなか様になっているのだが、言っている内容はあまり褒められたものではない。

「それで?今日はどうしたんだい?」
「えっとね、大将棋一式ってあるかな?」
「大将棋かい?」
「うん、いやー今まで使ってた奴が滝の下に落ちちゃってさ」

 水場とはいえ、滝に落ちた物は河童でも拾う事は難しいのだろう。

「それなら妖怪の山にもあるんじゃないのかい?」
「や、だって、新品ってお高いでしょう?香霖堂だとボロだけどお安く手に入るし」
「ボロは余計だよ、それに古いからと言って必ずしも安いとは限らないさ」

 むしろ古いからこそ、値が張るものが多い。
 故に骨董品を扱う古道具屋という商売が成立するのだ。

「ま、そこは霖之助に期待してるよ」
「ああ、そうかい」

 物が物だけに少し時間がかかる旨を伝え、二人にお茶を出してから探し始める。
 はてさて、何処に仕舞い込んだだろうか?

「頑張ってねー……熱っ!」
「大丈夫?」
「うん、ひょっと痛ひけど、らいじょうぶ」

 姿は見えないが「ふーふー」と、お茶を冷ましている様子がうかがえる。

「ああっ!忘れてた!」

 何を思い出したのか。
 にとりが急に立ち上がりそのまま店の外へと走り出す。

「ごめん!ちょっと魔理沙のところへ行ってくる!」
「にとり、将棋盤はどうするの?」
「椛と霖之助に任せた!」



 外に飛び出したにとりの姿がフッとかき消えた。
 光学迷彩?だったかな。
 一人の時はよくそれで姿を消して移動しているみたい。

「どうしましょうか?もりっ……り、り」
「さっきも言ったけど、君が言いやすい呼び方で良いんじゃないのかい?」
「いえ、にとりの言う事も尤もだと思います。ですから……」
「そうかい?まぁ、好きにすると良いさ。僕はどんな呼び方でも構わないからね」

 いい人、だと思う。
 にとりは「不愛想だ」って言ってたけど私はそうは思わない。

「さて、お探しの将棋盤が見つかったよ」
「本当ですか?」

 わ、すごい。
 にとりが言ってた通り本当に何でもあるんだ。

「とりあえず品物を見て貰えるかい?購入の検討はその後でも構わないよ」
「はい、わかりました」

 受け取った将棋盤は思ったよりも少し重たい。

「もし表面の傷が気になるのなら、にとりに頼んで削り直して貰うと良い」
「いえ、使う場所が場所なので、このぐらいの傷があると気軽に使えます」

 滝の裏の様なゴツゴツした岩場では、綺麗な物だとかえって使いにくい。

「すみません、駒の枚数を数えたいので手伝って頂けますか?」
「ああ、構わないよ」

 互いに駒入れを手に取り、黙々と盤の上へと並べていく。

「……」

 あれ?もしかして?

「り……森近さんは大将棋を指されるのですか?」
「基本的なルールは知っている、と言った所だね。とてもじゃないが君やにとりとは勝負にならないよ」

 ちょっと意外。
 ちゃんと並べ始めるから、てっきり指せるのだとばかり。

 ……あ、そうだ。

「もし宜しければ、私が大将棋の指し方をご説明しましょうか?」
「君が、かい?」

 思いつきで口にしたけれど、彼の困ってる顔を見て少し後悔。

「……ごめんなさい、ご迷惑ですよね?」
「いや、そんな事は無いよ……そうだね、是非ともご教示願いたい」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします」

 多分、社交辞令で了承してくれたのだと思う。
 でもこれでこの店に来る理由が出来たんだから、良しとしないと。

「おや、もう良いのかい?」
「はい、駒は全て綺麗で、「駒落ちで勝負」という事にもならなくて済みそうです」

 ちょっぴり浮かれた私は、盤上の駒をササッと片づける。
 パッと見だけど、枚数は合っているから問題ないはず。

「それで、これら一式はお幾らでしょうか?」
「そうだね……これぐらいで如何かな?」

 パチパチっと玉が弾かれたそろばんを確認する。

 うん、大丈夫。
 これなら手元にあるお金で足りそう。

「はい、そのお値段でお願いします」
「毎度有り難う御座います。さて、風呂敷か何か包む物はあるかい?」
「にとりが持っているのですが、その……」

 にとり、私を置いてどっか行っちゃうんだもの。

「それならウチの風呂敷を使うと良い。今から包むので少し待ってくれ」
「ごめんなさい……ありがとうございます」
「手持ちの袋や風呂敷より品物の方が大きかった――というのは良くある事だからね、気にする事はないよ」

 うう。
 少し恥ずかしい。

「はい、これが将棋盤でこれが駒と駒入れ、それとこっちはオマケさ」
「これは何ですか?」

 丁度、手のひらに収まるくらいの、丸くて平べったい何か。
 明るい包装で何か書いてあるけど、一体なんだろう?

「白狼天狗は哨戒任務が大変らしいじゃないか。
 それでこういった保存食はどうだろう、と思ってね」
「これが食べ物なんですか?」
「これは缶詰といってね、こいつ自体は食べることが出来ないけど、この中に食べ物が入っているんだ」
「へぇ、これは美味しそ…う……」

……え?

 なに、これ。

「だろう?他にも色々あってね、これは……」
「わ、私はっ!」

 そこに書かれていたのは、元気そうな真っ白い犬の写真と『成犬用』の文字。

「私…は、犬、じゃ、ありません……」
「ん、ああ、それは知っているが」
「……」

 下ろしたての、皺一つ無いスカートをギュッと握りしめる。

 白狼天狗としての誇りよりも。
 彼に、そう見られている事の方が、とても辛くて。悲しくて。

「あー…すまない、そういうつもりで渡した訳では無いんだ」

 ……

「確かに元々は犬用の餌だけど、口にしてみると意外に味が良くてね」

 パカッという音につられ、恐る恐る顔を上げる。

「ふむ、マグロも良かったがこのササミもなかなか」

 本当に?

「ほら、論より証拠だ。一口食べてみないかい?」

 差し出された物の匂いを嗅ぐ。

 大丈夫、かな?

「……ん」
「どうだい?」
「おいしい……」
「うん、気に入って貰えたようでなによりだ」

 ウンウンと頷きながら、彼もまた中身を口にする。

「もう一口良いですか?」
「ああ、良いとも」

 差し出されたスプーンを前に口を開く。
 そういえばこのスプーンって彼が使った……

「あ」

 これって。
 にとりが持ってた漫画に載ってた、えっと……?
 あ、そうだ、間せ……つ!?

「っ!!」
「どうした?何か変な物でも入っていたのか?」

 思わず口を押さえて顔を背ける。
 そ、そう言えばあの漫画に、差し出されたスプーンで食べさせて貰うのも、その。
 仲の良い男女がするものだって……

「おい、椛!?」
「ひゃうっ!」
「大丈夫か?」
「だっ、大丈夫です!」

 か、顔がっ。
 ちち、近!

「~~~!!」
「あ、おい!」

 驚きと恥ずかしさに耐えきれず、お店から逃げるように飛び出す。



「はぁはぁっ……」

 お店から離れた所で息を整えようとして。

「あうぅ……」

 失敗。
 どうしても一連の出来事を思い出してしまい、思わず両手で頭を抱え込む。

「あっ、将棋盤……」

 ここで始めて、両手に何も持っていない事に気が付く。
 うう。
 今から行くのはちょっと恥ずかしいし……

「うん、明日……明後日にしよう」
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  1. 2011/05/31(火) 22:58:58|
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