マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

式と店主と付喪神

pixivに投稿してたお話。
道具、大事にしてますか?







「もぉ!なんでわきちの邪魔するの!?」
「それは僕の台詞だ、営業妨害をしているのは君の方だろう?」

 全身水色の少女と対峙した僕はじりじりと間合いを詰めて様子を窺う。
 手に持っている紫色の傘が視界の殆どを占めているので、まるで喋る傘と対峙しているような錯覚を覚える。

「営業妨害って言っても、殆ど人が来ないじゃない」
「今日はたまたまお客が来ていないだけだ、変な事は勘違いをしないでくれ」

 多々良小傘と名乗るこの少女は、どうやらこの店に居座ってここに来る人間を脅かすつもりらしい。
 そんな事をされてお客が寄りつかなくなっても困るので、どうにかして彼女を追い出そうとしているのだが。

「あ!知ってる、こういうのを閑古鳥が鳴くって言うんだよね?」
「……つまり君を追い出せばこの店はお客で賑わう様になる、という事か」
「なんでそうなるのよー!」
「先程から聞こえるのは君と僕の声だけなんでね。
 この店の主である僕が閑古鳥の筈が無いだろう?となれば残った君が閑古鳥という事じゃないか」
「私は閑古鳥じゃ無いもん!」
「閑古鳥、つまりカッコウという鳥は、他の鳥の巣に卵を産み付けて巣を乗っ取る習性がある。
 君はここに居座ろうとしているのだから、カッコウみたいなものじゃないか」

 何はともあれ、乗っ取られない内にどうにかして追い出さないといけない。

――カランカラン

「こんにち…」
「あー!!」

 久しぶりに来るお客を指差さないで貰いたい。
 もし気分を害して帰ってしまったらどうしてくれるのだ。

「もぉ!何でまだ準備していないのに来るのよー」
「これは失礼、お取り込み中でしたか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。
 八雲さん、お久しぶりです」
「お久しぶりです、店主殿」

 彼女の丁寧なお辞儀に合わせてふさふさの尻尾がユサユサと揺れる。
 時たまこうして、主人である紫の代わりにこの店にやって来るのだ。

「しかし、この時期に来られるのは珍しいですね」
「えぇ、本来でしたら紫様が伺う予定だったのですが急遽、博麗神社へ……」
「なるほど、そう言う事でしたか」

 視界の端で小傘がゴソゴソと動いているのが見える。
 次に来る客を脅かそうと準備しているようだが、恐らくもう来ないだろう。

「それでは、本日はどの様なご用件でしょうか?」
「はい、今月の燃料代を頂きに参りました」
「……まだ燃料は受け取っていない筈ですが」
「店主殿、ストーブをご確認下さい」

 不審に思いながらも、自信に満ちた藍の言葉に従ってストーブを確認する。
 ここ最近急に冷え込んできたので、いつでも使えるように準備だけはしておいたのだ。
 もっとも、燃料を使い切っていたので、どれだけ寒くても使う事は出来なかったのだが。

「そろそろ寒くなってくる頃だから入れておきました、との事です」

 にこやかに答える藍を一目見て「ふぅ」とため息をつく。
 ストーブの燃料を示す針は『満』を指しており、今すぐにでも使える状態になっている事を示していた。
 僕としては、使えればそれで良いのだが、なにやら監視されているようで少し居心地が悪い。
 もっとも、気にした所でどうにもならないのだが。

「確かに、燃料を確認しました」
「それでは失礼します」

 店の中にある商品を見繕っている彼女を横目に、ストーブに火を入れる。
 マッチで火を点すと、中の芯に沿ってサァッと炎が広がる。
 最初は消えそうな程弱々しい炎だが、時間が経つにつれて力強く、勢い良くなってくる。

「ほえー……」

 先程までドアの近くに居たはずの小傘が、ストーブに興味津々といった表情で見つめている。
 炎が落ち着くのを待つ間に、薬缶に水を注ぎストーブの上に置く。
 こいつを使うと店の中が暖かくなるのだが、乾燥気味になるのでこうして薬缶で加湿をしている。
 そして、いつでも暖かなお茶を嗜む事が出来るので一石二鳥と言うわけだ。

「店主殿、今月はこちらを頂きます」
「ああ、はい、わかりました」

 彼女たちが選ぶ基準はよく判らないが、使い方が判らないものが多い気がする。
 今回彼女が選んだ物は、『音と絵を記録する』鏡のような円盤と『様々な体験が出来る』小さな黒いカード。
 使い道が分からない以上はここでは売れないので、燃料と交換してくれるのはとても有り難い。
 希に、二度と手に入りそうに無い貴重なモノまで持って行かれるのが少々不満ではあるが、背に腹は代えられない

「ところで店主殿」
「何でしょうか?」
「あれも商品のなのでしょうか?」

 商品名と日付を帳簿につけ終え、それらを彼女に引き渡す。

「確かに付喪神は道具ですけれど、商品として扱うのは少々難があるのでは?」

 彼女は緩みきった顔でストーブにあたる小傘を軽く指さし、その二つを懐へと淡々としまい込む。

「あれは商品でもお客でもありませんよ」
「おや、そうでしたか」
「……付喪神ですか」
「えぇ、付喪神ですよ」
「うらめしやー唐傘お化けだぞー」

 やる気の無い口調と緩みきった顔からは、恨めしさが一つも感じられない。

「そう言えば」
「はい?」
「付喪神とは物を粗末に扱うと化けて出てくる、と言われていますよね?」
「えぇ、そう言われていますね」
「つまりそれは『物』自身がどう扱われているかを理解していると言う事に成るわけですよね?」

 以前からずっと気にはなっていたのだ。

「道具に意思があるのでしょうか?」
「ええ、ありますとも」
「ほう……是非とも教えて頂きたい」

 そう、僕は道具に意思というものがあるのならば、それを知りたいのだ。

「まず、道具が人の手によって作られ、使命を与えられます。
 人に使われ、使命を果たし、そして使命を果たす事に喜びを感じ、道具は持ち主の為に働き続けます」
「そうなの?」
「……君は元々道具だろう?」
「そうなんだけど……うーん」

 小首をかしげる小傘に苦笑いしながも藍の説明は続く

「こほん、こうして使われた道具が必要なくなったり、あるいは壊れて使えなくなった時に供養を行い、
 道具に必要が無くなった事を知らせてやるのです」

 だが、一つ疑問がある。

「ロウソクを始めとした消耗品や、爪楊枝などの使い捨ての道具はどうなのですか?
 無くなった物は供養しようが無いですが……」
「それらの道具は使われるにつれ、意思を持ち、自分たちの限界を知ります。
 ですから、使い切る事がある意味では供養となるのです」
「なるほど、確かにそうでないと少し困りますね」
「また、使い捨ての道具については、意思がこもる前に役目を終えてしまうので、供養の必要性がありません」

 僕は今まで使ってきた消耗品の数を数えようとして、あまりの多さに考える事をやめた。
 外の世界の物に『使い捨て』と名の付く物が良く落ちているが、供養の手間を省く為なのだろう。
 合理的ではあるが、少し勿体ない気もする。

「しかし、供養されずに棄てられた、意思を持つ道具達は、自分たちがまだ必要とされていると思い、使われる事を待ちわびます。
 そして、どうにかして人間達に気が付いて貰おうと考え始め、それが何時しか付喪神になるのです」
「つまり人間を驚かすというのが多いのは……」
「ええ、もう一度自分たちを使って欲しいというアピールですよ。
 ……お前もそうなんだろう?」

 「いや僕は」と開きかけた口をつぐむ。
 彼女の言葉は僕ではなく。

「もしお前さえ良ければ」

 とても柔らかな口調で。

「人を驚かす様になった時の事を、店主殿に話してくれないか?」

 微動だにせずジッとストーブの炎を見つめている小傘に優しく問いかける。
 橙色に照らされたその表情は先程までとは違い、ジッと何かを堪えている気がした。

「無理はしなくても良いんだぞ?ただイヤならはっきりと言って欲しい」

 藍の言葉を最後に、静寂が訪れる。
 今日は珍しく風が凪いでるせいもあり、店の中はしんと静まりかえっている。
 静かなのは慣れているが、動く事すら躊躇われる程の静けさ、というのはどうにも居心地が悪い。

「ふぅ」

 数字で表すと、ほんの僅かな時間のかもしれない。
 しかし、この静寂というものが時の経過をとても長く感じさせる。
 これは無理だ、と判断した藍が口を開く。

「……しが」

 だが、それより先に、重々しい口調で口を開いたのは小傘だった。

「私が、人間を脅かそうとした切っ掛けはね」

 スクッと立ち上がり僕の顔を見つめる。

「棄てられてボロボロになって私は、いつの間にか人気の無い寂しい路地裏に居たの。
 私も、こんな所じゃ私の事なんて誰も気が付かないだろう、って諦め掛けてたんだ。
 そうしたらね?急に強いが風が吹いて、私はそのまま飛ばされてしまったの。
 風に飛ばされるのは慣れっこになってたけど、これだけ強いと壊れてしまいそうなのが怖かったかな」

 あはは、と力無く笑う。

「壊れませんようにって思いながら風に身を任せていたら、誰かが驚いた声を上げたの。
 誰か居るのかな?と思って意識を声の方に向けたら、女の人が驚いたような顔でこっちを見てくれてたんだ。
 その時は拾ってくれなかったけど、私が興味を惹いたのは間違いないでしょう?
 だから私は人間を驚かす事にしたの、もしかしたら私を拾ってくれるかもしれないじゃない」
「だが……」

 確かに拾ってくれるかもしれない、けれどもソレには一つの条件がある。

「うん……ボロボロになった傘なんて誰も使ってくれないよね?
 でもね、もう驚かすのをやめる事が出来なかったの」

 そういえば、魔理沙が「人懐っこい変な色の唐傘お化けに絡まれたぜ」と言っていたが、恐らく小傘の事なのだろう。
 その時は「棄てられた道具が人懐っこい筈が無いだろう」と一蹴したのだ。

「道具、というのは、幼子とそう大差無い存在なのです。
 一人では何も出来ず、善悪の判断も付かず」

 だが、彼女の話を聞いた今なら人懐っこい理由が分かる気がする。

「そして何よりも……孤独を嫌います」

 彼女達はとても寂しがり屋なのだ、と。





「ねぇ、店主さん」
「なんだい?」
「ここの子たちはみんな売り物なの?」
「ああ、そうだよ」
「そっか……うん、良かった」

 はにかむ様に笑う小傘。
 その表情を見ると、先程までの落ち込み様が嘘の様に思える。
 恐らく、自分の境遇に理解を示してくれる人物に初めて出会ったのだろう。
 藍に懐いた彼女は、藍自身の事や人間の驚かせ方について色々と質問をしていた。

「店主殿、長々と居座ってしまって申し訳ありません」
「いえいえ、お気になさらないでください」

 自立している式神と言えども、彼女もある意味では道具と言っても差し支えないだろう。
 だからこそ、道具であった小傘を見捨てておけなかったのかもしれない。

「それでは私はここで失礼させて頂きます」
「あぁ!待ってー私も!」

 タッタッタと小走りに藍を追いかける。
 道具だった妖怪の『付喪神』
 妖怪だった道具の『式神』
 どちらも『神』と付く二人がこの店で出会うというのは、果たして偶然だったのだろうか?





 二人が遠くに離れたのを見届けて、誰も入れない様にドアの鍵を掛ける。
 魔理沙を始めとした、あの少女達相手に何処まで通用するかは分からないが、時間稼ぎぐらいにはなるだろう。

 周囲に気を配りつつ、ソッと霧雨の剣を手に取る。
 ボロボロの鞘から抜き出した刀身は、普通では考えられない輝きを放っている。
 僕はこの剣に認められるまで、じっくりと待つつもりで居たのだ。
 だが、それは大きな間違いだったのかもしれない。

「使命を果たす事に喜びを感じる、か」

 藍と小傘。
 あの二人の言葉で無ければ絶対に信じなかったかもしれない。

「とりあえず、素振りから始めてみるか」
スポンサーサイト

  1. 2011/05/31(火) 22:57:25|
  2. SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<Present for...... | ホーム | 幻想になった音>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://rapter999.blog89.fc2.com/tb.php/11-b43b542e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

らぷこ

Author:らぷこ
[渡る気かい?]

p
あ、こっちにも上げたりしてます。

リンクフリーです。

すくすくの経県値

最新記事

最新コメント

カテゴリ

管理人より (1)
SS (25)
酷道・写真 (10)
その他 (5)
雑記 (1)

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。