マヨヒガへの道

東方関係、主に霖之助と少女達のお話。時々旅行記。

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幻想になった音

pixivに投稿してたお話。
ここの続きみたいな、そうじゃないような。
ツイッターで某Y氏の発言からネタを頂き、もとい勝手に拾い上げました。ついったーこわい。







 最近ルナ姉さんの様子が変だ。


 まず一つ目。
 私たち騒霊は食事をしなくても大丈夫なのに、最近のルナ姉さんは良く料理を作る。
 まぁ、姉さんの作る料理は美味しいから、それはそれで良いのだけど。

 二つ目。
 ちょっとだけテンションが高い気がする。
 普段何もしていない時は判りにくいけど、演奏を始めると判りやすい……と思う。
 その所為なのか、ここ最近よく音合わせに失敗する。

 三つ目。
 よく一人で何処かへ出掛ける事が多くなった。
 メル姉さんに聞いてみたけど、姉さんも知らないらしい。

 多分だけど、その行き先に何かあるのかもしれない。
 もしそこに何かあるのなら、それこそルナ姉さんの様子がおかしくなった原因だ……と思う。





「それじゃ、留守番よろしく」
「いってらっしゃーい」
「行ってらっしゃい」

 今日も何処かへ出掛けるルナ姉さんを見送る。
 いつもなら部屋に戻って演奏の練習をしたりするけれど、今日の私は違う。

「さぁーて、何をしようかしら」
「ごめんメル姉さん、私もちょっと出掛けてくる」

 ウーンと伸びをするメル姉さんにひとこと言い残して、ルナ姉さんの後を追いかける。
 普通に空を飛んでいった方が早いけど勘の良い姉さんの事だから、直ぐに気が付かれてしまう。
 だから出来るだけ低く、かつ見失わない様に追いかけなきゃいけない。





「何で見失うかなぁ……」

 姉さんを見失ってから既に30分。
 独り呟きながら魔法の森を当てもなく彷徨っていた。

 姉さんが森へ向かって徐々に降りていくのを見て、中へ飛び込んだまでは良かった。
 けれど、深い森の木々に視界を遮られ、姉さんの姿を見失ってしまった。

「もぉ、何でこんなに木が多いのさ」

 『木』がたくさんあるから『森』と呼ぶのだと言うのは、判っているけど口に出さずには居られない。
 ぶつくさ文句を言いながら歩いていると、急に目の前が開け小さな道に出た。

「もういいや、帰ろ……?」

 遠くに二つの人影を見つけ、急いでたった今出たばかりの茂みへと戻り様子を伺う。
 二人居るから人違いかもしれないけど、もしかしたら姉さんかもしれない。

「……」
「…った……は?」

 茂みの陰に隠れて二人が来るのをジッと待つ。
 姉さんの隣にいるのは背格好からすると男の人みたい。

「…そうだな、何だと思う?」

 隣を歩いている男の人が、手に持っている細長い木箱を姉さんに渡した。
 それを受け取った姉さんは木箱をじっくりと見つめて何か考えているみたい。

「うーんと、この穴の開き方と金属棒は……らじお?」
「確かにラジオも同じ構成だけど、残念ながらラジオじゃない」
「そっか、残念」

「はい」と木箱を返す姉さんの横顔は、とても楽しそう。
 こんなに楽しそうな姉さんを見るのはとても久しぶりな気がする。

「そうだな、確かに音を出すという意味ではラジオに近いかもしれない」
「そうなんだ?」
「実はこう見えても……」

 二人とも段々と遠ざかっていくので会話が聞き取りにくくなってきた。
 もう少ししたらここから出て二人の後を追いかけようかな?

「…で店に戻ったらルナサに……」


――ムカッ


 何でだろう、とてもイライラしてきた。
 ただ姉さんの事を呼んだだけだ、呼び捨てではあるけれど。
 別になんて事無い一言だ、普通なら軽く流せたと思うけれど。

「姉さん!」
「リリカ?」

 姉さんがどこか遠くに行ってしまいそうだった。
 だから私は姉さんを連れ戻し、一刻も早くこの場から離れたかった。

「姉さん、帰ろう」

 驚いている姉さんの手を引っ張る。

「リリカ、どうしたんだ?」

 私は姉さんの質問に答えることなく、そのままズンズン歩き始める。

「ルナサ、その子は…?」

 やっと状況を把握したアイツは、また姉さんの事を呼び捨てにする。
 その一言でカッとなった私は振り返り、思っていることを考え無しに若白髪を睨みながら言い放つ。

「お前なんかに姉さんは渡さないからなっ!」





「何処が良いんだよあんな奴」

 私と一緒に帰った姉さんに叱られた翌日。
 私は再び独りで魔法の森へと出かけていった。
 姉さんの話だとあの若白髪はこの辺で道具屋をしているみたい。

 本当はアイツの顔なんて見たくはない。
 けれども姉さんを守るためには、アイツのことを調べないといけない。
 そうだ、アイツは絶対悪いやつに違いないんだ。

「どこにあるんだろう……」

 朝から直ぐにでも泣き出しそうな曇り空の下でずっと探しているけど、なかなか見つからない。

「うわっ、降ってきた」

 一つ二つと雨粒が顔を濡らす。
 直ぐに見つかるだろうと思っていたけど甘かったみたい。

「もぉ、何なんだよぉ」

 愚痴って居る間にも雨足はどんどん強くなってくる。
 何処かで雨宿りするために当てもなく走り始めると、森の外れに小さな建物が見えてきた。

 あそこで雨宿りしよう。
 水はねを無視して、建物まで走り込む。
 近づくにつれて、建物の様子が分かってきた……けど。

「……ゴミ屋敷?」

 思わず口にしてしまうぐらい、建物からはモノが溢れていた。
 これだと軒下を借りる事が出来ないじゃない。

「ゴミ屋敷だし大丈夫だよね」

 少し躊躇したけれど、中で雨宿りすることにした。
 もうこれ以上雨には濡れるのはゴメンだ。
 どうせこんなゴミばかりしか無いような所だ、住んでる人は居ないはず。
 幽霊とか妖精とかそういうのは居そうだけれど。

――ガチャ

 あまり使われてなさそうなので、固いと思っていたドアはすんなりと開いてくれた。
 もしかして、ここってよく使われているのかな?
 中の様子を窺いながら建物の中へと入る。

「お邪魔しまーす」

 誰も居るはずが無いと思っていても、つい挨拶をしてしまう。
 そう言えば姉さんはこういう事には厳しか……。

「いらっしゃいませ……」
「ぅひゃぁ!!」

 返事が返ってくると思わなかった私は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「おや、君は確か……」

 心臓がバクバク言う胸を押さえ、声のする方へ顔を向ける。
 青と黒の服で腰には赤いバッグ、背は高くその白髪は……

「その様子を見ると……雨宿りに来た、と言った所かな?」

姉さんを騙してる若白髪!!

「ちょっと待っててくれ」

 見つけた、こんな所に居たのか。
 戸棚から何かを取り出そうとしている若白髪を睨み付ける。

「ほら、これで体を拭くと良い」

 戸棚から取り出したタオルを私に差し出してきた。
 そうやって、優しい振りをしてから姉さんを騙したんだな。
 その手には乗るもんか!

 プイッとそっぽを向き、タオルの受け取りを拒否する。

「君は良いかもしれないが僕が困る、店の商品が濡れてしまうだろう」

 ポンと頭の上にタオルを乗っけられる。
 本当はソレを突き返したかったけど、雨水を吸い取るタオルの手触りに負けてしまった。

「雨が止むまでここで雨宿りすると良い」

 その様子を見届けた若白髪は、先程まで座っていた椅子へと戻る。
 机の上には、昨日姉さんに渡していた木箱ポツンと置いてあった。

 頭や腕をタオルで拭きながら店の中を見渡す。
 大きな壷や食器を始め、派手な色の袋や楽器など色んなモノが雑然と置かれている。
 あの四角い大きな箱とかは一体どういったものなんだろう?

 役に立ちそうなモノや面白そうなモノもいっぱいあるけど、ゴミ屋敷という印象は変わらない。

――フォ~~~ン

 ……何、この音?
 どこからこんな面白そうな音がするんだろう?

 再び店の中をグルッと見回して音源を探していると、あの若白髪が宙にかざした手を動かしているのが目にとまった。
 どうやら、あの『金属棒のついた木箱』に手を近づけたり離したりすると音程が変わるみたい、なんだけど。

――ヒュ~~~ン

 へたくそ。
 もっと上手く扱えないの?

「貸して」

 あまりの酷さに我慢できなくなった私は、ツカツカと机に近寄り若白髪から木箱を奪い取る。

「あ、おい、何をするんだ」

 手を伸ばして守ろうとする若白髪から木箱を奪い取り、適当な椅子に置き手をかざす。
 こんなもの私の手にかかれば朝飯前よ!

――ヒュイ~~~ン

「あれ?」

 おかしいな。
 さっきとそれほど変わらない音しか出てこない。
 これって、思っていたより難しい……?。

「まったく、遊びじゃないんだから返しなさい」

 若白髪が落ち着いた足取りで私の横に立ち、木箱を奪え返すのかと身構えた。
 しかし、そんなそぶりを見せる事無く、椅子の上に置いていた木箱の説明を始める。

「これは『テルミン』といって、『手を触れなくても演奏できる楽器』なんだが」

――フォ~~~ン

「音の出し方は判ったんだが、演奏の仕方がわからなくてね」

 手をかざして、音を出したり止めたり。
 基本的な演奏としては間違い無いんだろうけど、何か物足りない気がする。
 一体なんだろう?

「君の姉さんに手伝って貰おうと思っていたんだが……」

 うん?
 もしかしてこれって……?

「ねぇ、これを回してみれば良いんじゃないの?」

 思いついた事をそのまま口に出して見る。
 私の意見に「どれどれ」といった感じで近寄ってくる若白髪。

「確かに音程は変わるけど、手を触れずに演奏しているとは言えないじゃないか」
「それじゃぁここを?」
「いやこれは……」
「でもそうすると……」





  ♪~  ♪~~ ♪~

 良く聞いた事があるような、それでいて一度も聞いた事のない音色が。

♪~~ ♪~♪~

 どこか優しく、どこか不安にさせる不思議な音色が。

   ♪♪~    ♪~~♪~

 雨上がり後の、柔らかな夕日が差し込む店の中をゆっくりと巡る。

「……っと、お終い」

 パチパチパチ
 演奏を終えると同時にたった一人の観客から拍手が一つ。

「流石は幽霊楽団員、素晴らしい演奏だったよ」
「私の手にかかればこんなモノよ!」

 本当はこうして実際に楽器を演奏する事なんて滅多になかったから少し不安だった。
 でも、上手く演奏出来たみたい。

「なるほど音程と音量をそれぞれ別の手で操るのか」

 最初の方は喧嘩みたいな言い合いでなかなか前に進まなかった。
 けれどあれこれ言い合いながら、どうにかこの楽器の演奏方法を探し出した。
 そう、このテルミンは右手で音程を、左手で音量を調節しながら演奏するものだったのだ。

「とはいえ、僕にはとても扱えそうには無いがね」

 彼が手をかざしてテルミンを操ってみるものの、演奏とは言い難い音が……

「おや?」
「あれっ?」

 二人して何度も手を近づけるが、全く音が出なくなってしまった。

「壊れたのかな?」
「いや、多分違うだろう」

 彼はテルミンをひっくり返し、裏面の板を取り外して中を見ている。

「ふむ、これもか」
「これも、って?」

 独りで納得している彼に近寄り、中身を覗き込む。
 彼は親指と同じぐらいの大きさの筒を私に手渡しながら説明をしてくれる。

「こいつは『アルカリ電池』と言って「道具に力を与えるモノ」さ」
「へぇ……」

 改めて『アルカリ電池』をしげしげと見つめる。
 どう見てもタダの筒にしか見えないけど……

「困ったな」
「何が?」
「こいつが無いとテルミンはもう使えないんだ」
「えーっ!?」

 折角使えるようになったのに……

「他に電池は無いの?」

 これだけ色々なモノがあるのだから、電池の一つや二つぐらい。

「無い訳では無いが……」
「え、じゃぁ!」

 期待に満ちた眼差しで彼を見るが、力無く首を振るだけだった。

「今までの傾向からすると直ぐに使えなくなってしまうだけだろう」
「そっかあ……」

 ガッカリしたせいか、疲れがドッと押し寄せて来た。
 ……あ、そうだ。

「ねぇ、これ貰っても良い?」

 そう、私は騒霊なのだから。

「どうせ、使えないんだし、ね?」

 本当に音が出なくても良いんだ。
 楽器という概念が大切なのだから。

「ああ、それは構わないが……」

 どこか歯切れ悪そうに答える

「使えなくなったとはいえ、一応、それも商品なんでね」

 つまりお代を支払えって事なのかな。
 その商売人根性に呆れるような、尊敬できるような

 でもね。

「あら、貴重な私のソロライブを聞けたんだから良いじゃない」
「確かに素晴らしい演奏だったが……」
「なら私も公演料を取っても良いわよね?」

 そんな事を言うんだったら、プロとしてそれなりのモノは頂かないと、ね?
 先にプロ意識を持ち出したのは彼の方なんだし。

「わかったよ、持っていくといい」

 ひとしきり悩んだ彼は諦めたような口調で、私にテルミンを譲ってくれた。





「それじゃ、そろそろ帰るね」

 テルミンを譲り受けた後も、私は店の中に居座っていた。
 目に映るモノが気になって仕方がないので、彼に色々と説明をして貰っていたのだ。
 気が付けば既に日は落ちきり月が夜空に浮かんでいた。

「ああ、気を付けてな」

 あ、そうだ、聞き忘れていた事があった。
 ドアノブに掛けていた手を戻し、彼の方へと振り向く。

「ねぇ、なんて言うの?」
「何がだい?」

 こんなにドキドキするのは久しぶりかもしれない。

「名前、あなたの名前を教えて」
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  1. 2011/05/31(火) 22:55:37|
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